森林地帯を往く
修験道
福岡県添田町の英彦山山中に広がる杉林の中には、古くから続く石畳の道があります。この道は、かつて英彦山で修行を行っていた修験者や山伏たちによって造られたと伝えられています。長い年月をかけて少しずつ手を加えられ、今に至っています。
この地域は、まるで天狗が住んでいそうな神秘的な雰囲気に包まれています。特に、九州天狗の棟梁とされる大天狗がこの地に住んでいるという伝説もあり、訪れる人々の想像力をかき立てます。
行者杉
耶馬日田英彦山国定公園の人工杉保護林を撮影しました。保護林は、国有林内に10.09ha指定されて
います。行者堂周辺の一群の老齢杉を「行者杉」といい、齢は200年から600年を経過していると推測されます。その成り立ちはつまびらかではありませんが、その昔英彦山に入山する修験者たちが、信仰上の理由から奉納植栽したものと伝えられています。
行者杉のうち「大王杉(行者杉の父)」と呼称されるひときわ大きな杉は、幹の周囲829cm、高さは52メートルあります。
菊池渓谷
地元の人たちが四季を通じて憩う、標高500m〜800mに広がる天然林渓谷です。歩きやすい遊歩道が整備され、清涼でとても湿り気のある空気があたりをおおっています。年間の降水量は2500㎜〜3000㎜あります。この渓谷の木々には着生植物が生い茂り、樹木の枝からは地上の栄養分を求めてツルが垂れ下がって、この渓谷ならではの独特の光景が繰り広げられています。
根を張る木
大分県由布市男池園地の中にある木。このようにはっきりと大きな石に絡まって根を張っているのはとても珍しい。写真の被写体としては、とても撮りやすいです。この森はとても歩きやすく、わかりやすいのですが、春になり暖かくなると足元には貴重な草花も咲いているので、注意しながら歩くとよいと思います。
大きなケヤキ
九重連山黒岳の麓、男池園地にあるケヤキの木を撮影しました。樹齢は正確にはわかりませんが、数百年は経っていると思われます。日本の有名なケヤキの中には、樹齢が千年以上に及ぶものも珍しくありません。この木も、上の写真の木と同様に、大きな石の上に根を張り、覆いかぶさるように成長しています。
人間の手が入っていない森
大分県黒岳の北側の麓に広がる広葉樹の原生林。この森を訪れる人が歩きやすいように、手入れがよくなされています。そのため本当に人の手が入っていないのかというとそうではないのです。原生林や原始林、それに自然林といった言葉は、一般的には自然のままの森林を指すと考えられていますが、学術的に明確に定義することは非常に困難です。
コケの森
ここ九重連山黒岳の湿った暗い原生林には、苔に覆われた森も広がっています。苔は根がないので、アスファルトの上にも生えるし、コンクリートの上にだって生えることができるのですが、この森では丸い石に生えています。そして、スポンジのように水分を溜め込むことができる苔の生息地においては、湿度を高く保ち、他の植物や小動物が生きることができる多様な生態系に大いに寄与しています。
Dolgoch渓谷を走る機関車
イギリス・ウェールズ地方中部に位置するタリスリン保存鉄道。雨の中、蒸気機関車が勢いよく走り抜けます。この森は、日本人にも馴染み深い苔や地衣類が豊かに育つ渓谷で、ウェールズで有名な滝もこの近くにあります。イギリスでは、このような雨量の多い森を「Celtic Rainforest(多雨林)」と呼んでいます。時には大雨で線路が流されてしまうということもあるんですよ。
森の鉄道
雨が降りしきる中、タリスリン保存鉄道の観光用旅客列車が走り抜けています。もう5月なので気候は暖かく、森の中は生命力が溢れていて生き生きとしています。古い蒸気機関車とレトロな客車なのですが、とてもそのようには見えず、元気よく走ってゆきます。こんもりとした森にあるDolgoch 駅ですが、知名度が高い保存鉄道だけあって、列車の到着する頃になると、どこからともなく大勢の人々がこの駅に集まってきます。この写真は、駅近くに架けられた歩行者専用の橋から撮影しました。
2012年春 Dolgoch渓谷
イギリス・ウェールズ中西部に広がる原生林で、スノードニア国立公園の南端に広がるDolgoch 渓谷の風景です。この写真は 2012年春、ロンドンオリンピックが開催された年に撮影しました。
最新の写真ではありませんが、内容は決して古くないため、公開することにしました。旅行者がこの渓谷を訪れる際の最適な交通手段は、タリスリン保存鉄道を利用することです。Dolgoch 駅が渓谷散策の起点となります。
機関車回し
イギリス西部スノードニアにあるタリスリン鉄道の終着駅、Nant Gwerndl駅では、機関車が前方から後方へと入れ替えられています。単なる機関車の付け替え作業ですが、それ自体が立派で魅力的なアトラクションとなっています。私が訪れた際には、機関車にエリザベス2世在位60周年を祝うプレートやイギリス国旗が飾られていました。この鉄道は、美しい昔ながらの風景が残るFathewの谷を11.8km、乗車時間にして1時間ほどにわたって走ります。
ウェールズの滝
この写真は日本ではなく、イギリス・ウェールズで撮影しました。タリスリン鉄道Dolgoch駅からほど近い場所にある滝です。日本とウェールズに共通しているのは、森林が人や環境に良い影響を与えるという考え方です。自然と調和して暮らすことが大切だとされているのです。森は空気を浄化し、物質的な恵みをもたらし、心の健康や人の幸福にも大きく貢献すると考えられています。しかしながら、とても残念なことに、イギリスの森林被覆率はわずか13%(2019年の統計値)で、EU平均の38%、日本の67%を大きく下回っています。近年、イギリスでも森林の価値が再評価されていることから、いつの日か、かつてのように豊かな森に覆われたイギリスに戻るのかもしれません。
この地域は2021年にユネスコの世界文化遺産に登録され、「ウェールズ北西部のスレート景観(The Slate Landscape of Northwest Wales)」の一部となっています。この森の地形は登り降りが急で、しかも足元が本当に滑りやすいところもあるので、散策する場合は滑りにくい靴を履いたり、足元に注意を払いながら歩いたり、安全には十分配慮しながら、美しい自然を楽しみたいものです。
